乳がん・甲状腺がん治療の日記

乳がん、甲状腺がんの発覚と手術・治療、その後の日常生活。

在原業平

私は本を読むのが好きなんですが、
こないだ読んだものの中に
「あっ!」と思う歌が載ってました。

  つひに行く道とはかねて聞きしかど 昨日今日とは思はざりしを
  (いつかは皆通る道であるとは以前から聞いていたが、
            まさかそれが、昨日今日のこととは思いもしなかった)

  ※つひに行く道=死出の道   
   古今和歌集十六巻
  
調べてみると、
在原業平の辞世の句。

「やまひして弱くなりにける時よめる」とあるので、
病気で心弱くなってしまった時の歌でしょうか。
そして、そのまま儚くなったらしい。

誰だって「人間はいつかは死ぬもの」って知ってる。
だけどそれが今日のことになるなんて、
誰も思わないですね。

たいていのがん患者さんがそうであるように、
私も、がんが見つかった時は
(もう、死ぬんじゃなかろうか??)と思いました。
肺に影が見つかった時には、
転移かとおびえて
思いつめました。

(薬で上手に生きれて40くらいまでかなぁ)とか。

世の中、「他人に代わってもらう」ということが
出来るものもあります。

たとえば、仕事を代わってもらう。
出産さえ「代理母」として
他人がやってくれる時代。

でも「死ぬこと」だけは、
誰にも代わってもらえない。
お金持ちも貧しい人も、
善良な人も悪意のある人も。
生きる意味がないと考えていた人も、
まだまだ人生に目標のある人も。

死ぬことだけは、
その本人がどうしても
自分で向き合わないといけない。

死ぬまでに、
必ずどこかでひとりで死と向き合わないと
その門をくぐれないんだと思います。

皮肉だけど、究極的に平等じゃん・・・。

転移かと疑ってたときは、
そーんなことをボンヤリ頭の中で考えていました。

私は肺転移におびえていて、
主人がそばで慰めてくれたけど、
誰がどんなにそばにいてくれても、
結局死ぬ時は独りだろうな、
でも向き合う勇気がなくて
それで怖かったんだと思う。

だから何だ?って話ですけど・・。